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うつ病の方が仕事で一番困ったことアンケート|「対人関係」がトップ!192人のリアルな体験。

うつ病仕事で一番困ったことアンケート

精神障害の中でも、うつ病はとくに多くの方が経験する身近な病気です。近年は法定雇用率の対象にも含まれ、企業も積極的に採用を進めています。

しかし、「雇用すること」と「安心して働き続けられること」は、必ずしもイコールではありません。

法定雇用率ナビは今回、うつ病を経験した方々に「仕事で一番困ったこと」のアンケートを実施しました。法定雇用率が上がり、各企業で障害者雇用が進んでいる中で当事者の方々は何を感じているのか…192名の方のリアルな意見になります。

目次

アンケート概要

アンケート概要
  • 調査対象:うつ病経験者の方(現在・過去含む)
  • 件数:192件
  • 実施時期:2025年7月18日~2025年7月22日
  • 主な質問内容:
    ・性別
    ・年齢
    ・仕事で一番困ったことは何ですか?(選択式)
    ・具体的なエピソードは?(自由記述)
うつ病仕事で一番困ったこと 募集

アンケート結果

アンケート結果

以下、アンケート結果になります。

性別

  • 男性:75人(39.1%)
  • 女性:117人(60.9%)

年齢

  • 10代:1人(0.5%)
  • 20代:54人(28.1%)
  • 30代:56人(29.2%)
  • 40代:45人(23.4%)
  • 50代:21人(10.9%)
  • 60代以上:15人(7.8%)

仕事で一番困ったことは何ですか?(選択式)

選択式の項目は下記になります。

  • 対人関係(同僚や上司との関係で困ったことがあった)
  • 体調管理(体調や気分の波をうまくコントロールできなかった)
  • 業務内容(業務量・内容・納期などが負担だった)
  • 相談環境(相談できる相手・制度がなかった)
  • 職場環境(雰囲気・ルール・配慮が合わなかった)
  • 通勤(通勤そのものが心身に大きな負担だった)
  • 休み(体調不良でも休みにくい雰囲気だった)
  • 休職(言い出しづらかった、戻りづらかった)
  • 退職(言い出せなかった)
  • 給料(休むことなどで給料が減った)
  • その他

■ アンケート結果|うつ病経験者が仕事で一番困ったこと(全11項目・192名)

  • 第1位:対人関係(同僚や上司との関係で困ったことがあった) … 66人(34.4%)
  • 第2位:体調管理(体調や気分の波をうまくコントロールできなかった) … 57人(29.7%)
  • 第3位:業務内容(業務量・内容・納期などが負担だった) … 16人(8.3%)
  • 第3位:通勤(通勤そのものが心身に大きな負担だった) … 16人(8.3%)
  • 第5位:相談環境(相談できる相手・制度がなかった) … 12人(6.2%)
  • 第6位:休み(体調不良でも休みにくい雰囲気だった) … 8人(4.2%)
  • 第7位:職場環境(雰囲気・ルール・配慮が合わなかった) … 5人(2.6%)
  • 第8位:休職(言い出しづらかった、戻りづらかった) … 4人(2.1%)
  • 第9位:給料(休むことなどで給料が減った) … 3人(1.6%)
  • 第10位:退職(言い出せなかった) … 2人(1.0%)
  • 第11位:その他 … 1人(0.5%)

今回のアンケートでは、「対人関係」と「体調管理」が大多数を占めており、精神的な負担の大きさが浮き彫りになりました。

とくに「対人関係」は、ミスの押し付け、理解のなさといった人間関係のストレスが背景にあるようです。制度や支援が整っていても、現場の「空気」や「文化」がうまく噛み合わなければ、安心して働き続けることは難しいと考えている方が多いようです。

また、「体調管理」や「通勤」「相談環境」など、自身の状態や働く環境に関する困りごとも目立ちました。これは、うつ病という病気の特性と、従来の働き方とのギャップといえます。

法定雇用率を「数字」で満たすだけでなく、「働き続けられる職場づくり」を本気で考えることが、とっても重要になってきます。実際のエピソードもみていきましょう。

具体的なエピソード

体験エピソード

第1位:対人関係… 66人(34.4%)

女性(30代)

パートさんのミスなのに、正社員であるという理由で私のミスにされ、酷く注意されたこと。日々上司からのプレッシャーに苦しみました

女性(30代)

少し怒られただけで心が沈んでしまって、仕事に集中することができなくなってしまった

男性(40代)

小規模の会社で働いていましたが、社長が感情的なタイプで、間違っていてもかなり強引に物事を押し進めてくるのがきつかったです

女性(40代)

出勤前は“がんばろう”という気持ちで行くのに、いざ職場に立つとコミュニケーションがつらく、会話しようとするだけで手が震えていました

男性(20代)

職場内の人でも緊張しながら話すことが多いのに、他部署の人に声をかけるのは本当に難しくて、いつもタイミングを逃してしまいました

女性(30代)

相手の機嫌を常に気にしてしまって、言いたいことが言えませんでした。自分を守ることができなかったのがつらいです

男性(50代)

直属の上司が“精神的な不調”に対する理解がなく、“気の持ちよう”で片付けられることが多く、孤立感がありました

女性(20代)

同僚は知らない。
こちらの状態を知らずにずけずけとものを言ってくるし、正常だと思ってるからパフォーマンスが落ちてるのをさぼってるという感じにされて、あたりが強くてつらい

男性(50代)

前の会社で上司からのパワハラでうつ病になった。会社は何もしてくれなかった。

女性(30代)

変に気を使われすぎたりして、仕事を振ってもらえなかったり、疎外感を感じるのが辛かったです。

寄せられたエピソードからは、うつ病を抱えながら働くことの難しさが、対人関係に色濃く表れていることがわかります。

ほんの些細な注意でも強く傷ついてしまう、相手の機嫌をうかがって自分の意見が言えない、そんな日々が積み重なることで、精神的な疲弊や症状の悪化を招いてしまう方も多いようです。

職場における「人との距離感」や「声のかけ方」は、マニュアル化しにくい領域ですが、だからこそ日常的な配慮や相互理解が求められます。

うつ病のある方にとって、安心して声を発せられる環境があるかどうかが、その職場で「働き続けられるか」のカギになると言えるでしょう。

第2位:体調管理… 57人(29.7%)

男性(30代)

体調がすぐに悪くなるのでなかなか回復しないし、仕事中も辛いですね。

女性(30代)

朝起きて仕事に行くまでが辛かった。なんとか行けても気分に波があり、急に涙したりして自分がうまくコントロールできませんでした。

女性(20代)

体調が悪く、今まで難なくこなせていたことが難しくなり、すごく疲れやすくなった。朝起きるのが苦痛でした。

女性(30代)

自分の感情をコントロールできず、情緒不安定、瞬間湯沸かし器のような自分に自己嫌悪になることが多かったです。

男性(30代)

仕事の人間関係で体調を崩してしまい、軽度のうつ病と診断されました。自分が悪いと思い込んでしまい、さらに症状が悪化していきました。

体調管理に関するコメントからは、うつ病特有の「波のある症状」に日々振り回されながらも、それでも仕事を続けようとしている苦しさが伝わってきました。眠れない、起きられない、感情が揺れる、涙が止まらない…。それらは決して「甘え」ではなく、病気の症状そのものです。

体調の変化は周囲から見えづらく、言葉にすることも難しいため、本人は「迷惑をかけているのでは」と自分を責めてしまいがちです。

企業側に求められるのは、病状の波を前提とした柔軟な働き方や、体調を正直に伝えられる社風。うつ病と向き合う人が「がんばらなくても働ける環境」こそが、定着するには重要になってくると言えるでしょう。

第3位:業務内容… 16人(8.3%)

女性(30代)

離れたら授業が見れなくなるので、脱走しそうな親子をずっと見張っていなきゃいけなかった。薄い授業も聞いてなきゃいけなくて、何のための仕事かわからなくなった。

男性(60代)

当時は休日出勤が当たり前。家にまで仕事を持ち帰って、たまの休日も仕事。気づけば心も体も限界でした。

女性(40代)

「うつ病の影響で頭がぼんやりして、物事を順序立てて考えたり、覚えたりすることができませんでした。それでも業務はこなさなきゃいけなくて、苦しかったです。

男性(40代)

全く自分でコントロールできるものではなく、物理的に業務量が多すぎた。

業務そのものが大きな負担になっていたという声も多く見られました。

うつ病の症状がある中で、「覚える」「考える」「整理する」などの作業が難しくなるのは自然なことです。しかし、周囲がその状態を理解しないまま、通常通りの業務を求められることで、さらに症状が悪化してしまうケースも少なくありません。

また、物理的に仕事量が多すぎたり、業務の意味や役割が見えづらい中での働き方は、自己肯定感の低下にもつながります。

「業務量を調整する」「仕事内容をわかりやすく伝える」「業務の意味づけを共有する」など、ちょっとした工夫が、うつ病のある方の働きやすさにつながります。

第3位:通勤… 16人(8.3%)

女性(40代)

数年前、突然電車の中で息苦しさと強い動悸に襲われ、そのまま途中下車。パニック障害と診断されてから、通勤が恐怖になりました。

男性(50代)

満員電車がとにかく苦痛で、朝から吐き気や動悸がする日も。毎日“今日は乗れるだろうか”という不安から始まっていました。

女性(20代)

朝はとにかく気力が湧かなくて、駅のホームまで行っても電車に乗れず、引き返したことが何度もありました。

男性(30代)

会社までの移動が1時間半かかり、それだけで疲れ果ててしまって、仕事に集中できませんでした。

通勤に関する声からは、「出社するまでにすでに限界」というリアルな状況が伝わってきました。満員電車による強いストレス、朝起きることへの不安、長距離通勤の疲労感。健常な状態でも大変な通勤が、うつ病を抱える方にとっては大きな壁となり、症状の悪化や欠勤にもつながります。

近年ではテレワークや時差出勤など柔軟な働き方も広がってきていますが、制度として整っていても「気軽に使える空気」があるかどうかは別の問題です。

「通勤がつらい」と言える職場、そしてそれを受け止めて対応できる体制があるかどうかは、精神障害のある方にとって働き続けられるかのポイントになります。

第5位:相談環境… 12人(6.2%)

女性(40代)

うつ病などの精神疾患に理解がなく、『うつ病=甘え・怠け・努力不足』という固定観念を持たれていて、相談するどころではありませんでした。

女性(50代)

就活ではデメリットが多く、地方では精神病歴のある人への理解は進んでいません。そのためクローズ就労しか選択肢がありませんでした。

「誰にも相談できなかった」という声は、制度や配慮があっても“使えない”現実を映し出しています。本人の勇気に頼らず、日常的に声をあげやすい空気づくりが大切です。

第6位:休み… 8人(4.2%)

女性(20代)

朝、休みの連絡をする時間が苦痛でたまらなかった。何を言われるか、どう思われるかが心配で、電話の前で動けなくなることもありました。

女性(40代)

休みたかったのですが人が不足していて、自分が休むと他の人に迷惑がかかる…と思うと、どうしても言い出せませんでした。

「休むこと」が心身の回復に欠かせない一方で、申し出づらい雰囲気や罪悪感が、さらに体調を悪化させてしまうこともあります。休むことを否定しない文化が必要です。

第7位:職場環境… 5人(2.6%)

女性(50代)

30代の頃、仕事中にうつむいたままだったり、計算結果に自信が持てず提出が遅れたり、返事が小さくなることがありましたが、周囲は冷ややかに見ていました。

女性(30代)

“明るく元気な人がいい”という雰囲気が常にあって、自分のような人間はそこにいてはいけない気がしていました。

「明るく元気」が正義のような職場では、静かに働く人が居場所を失いがちです。多様なスタイルが尊重される環境こそ、誰もが安心できる職場といえるでしょう。

第8位:休職… 4人(2.1%)

男性(60代)

病院でうつ病と診断されたとき、休職が必要でしたが、言い出しにくくてそのまま無理して出勤してしまいました。

第9位:給料… 3人(1.6%)

男性(20代)

朝起きると動悸が止まらず出勤できない日が多く、有給も使い切っていたため給料面がかなり厳しかったです。

第10位:退職… 2人(1.0%)

女性(20代)

新卒でうつ病を隠して大手企業に入社。田舎の過疎地域を担当させられ、相談もできず、最後は何も言えずに退職しました。

アンケート調査をしてみて

今回のアンケートから見えてきたのは、「うつ病の症状そのもの」だけではなく、それを取り巻く職場のあり方や人間関係、制度とのミスマッチが、当事者をさらに追い詰めているという現実です。

誰にも相談できない空気。休みたくても休めない雰囲気。感情の波や体のしんどさをわかってもらえない職場。「ちょっとしたこと」の積み重ねが、大きな障壁になっていることが、リアルな声から伝わってきました。

法定雇用率の達成はゴールではなくスタートです。大切なのは、数字を満たしたあとに「誰が、どう働いているのか」を考え、働きやすい環境を作っていくことがとても大事になってきます。

うつ病を抱えながらも働こうとする人たちの考えや悩みを知ってもらうきっかけになればよいと思っています。

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この記事を書いた人

法定雇用率ナビの編集部です。福祉業界員は5年以上在籍しており、企業の障害者雇用や障害者の方々のリアルな就職状況など目の当たりにしてきました。わかりやすい言葉で様々な角度からの情報をお届けできたらと思います。

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